灰釉は美しい。
木や植物を燃やした灰を、釉薬の主成分としている。
例えば、土灰(雑木)、なら灰、松灰、林檎灰、藁灰など。
とにかく、無数にある。
灰釉の構成はいたってシンプル。いさぎよいのである。
本当にそうか?
自分はいさぎよいのか? 疑問が残る。
灰釉の器を作る理由は?と問われれば、原点に旅する楽しさだと思う。
ろくろをまわし、灰釉をかけて、焼く。
焼き上がった器に、料理を盛って食べる。
単純明快。灰釉の醍醐味がここにある。
自分の作為よりも、もっと大きな力に任せようと、出発したはずの原点回帰。
それなのに、よこしまな心が顔をだす。
機能美だけで充分なはずが、いつの間にかルックスを求める誘惑にかられる。
可愛い小悪魔が、「いらっしゃい。」と耳元でささやき始める。
ああ、灰釉の道は茨の道である。
魅力的であるが故に、灰釉の虜になった者の宿命であると、気づき始めている。