夕方、散歩にでる。
歩いたり、走ったり、空を見上げたり。
何を考えるでもなく、独り言を呟く。
「美しいものを、持て余すのは、罪ですか?」
風が肌をすべり、ヒグラシの声が降り注ぐ。
標高数百メートルの山が、気高く見える。
「罪ではないですよ。内なる自然です。」
ひかれたまむしが、ひからびてる。
汗をかぎつけたヤブ蚊が、隙を伺ってる。
「満天の星空のもと、眠りについた日を、覚えてますか。」
息づかいが、はっきり聞こえてきた。
色濃くなった夜に、溶け込んで行く。
「隙だらけのあなたが、魅力的なんです。」
こんな呟きを、風船にのせて、舞い上げる。
あの人に、届くだろうか。
2015・8・23